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江渡裕美さん。日本紅茶協会認定ティーインストラクター。紅茶の世界と花の写真はどちらも奥深く、追求しがいがあると言う。2回目の参加となる今回のグループ展を前に、辿り着いた境地とは。

もっと自由に撮っていいんだ、というところへ何とかたどり着けた今。
初めて参加した去年に比べると、今回は気持ちがずいぶん楽です。
と言うのも、最初は小川さんの写真に近づけようとしていました。花の写真集「MOMENT OF TRUTH」がお手本だと思っていたので、その写真の世界観に近づくことは自分のテクニックでは難しく、随分と苦労しました。何とか作品を2点出展しましたが、展示会の期間中に小川さんやいろいろな方とのお話しして、「仕事でやってるんじゃないんだから好きに撮れば?」と言われ、はっとし、「もっと自由に撮っていいんだ」とちょっと気が楽になりました。
でもそこにはまた次のハードルが待ち受けていました。それは、自分が何を伝えたいのか、どう表現したいのかという、もっと本質的なテーマが必要なことに気づきました。
実はそれまではそういった本質的なテーマまであまり考えたことがなく、単にテクニックを磨いて被写体を「美しく」撮りさえすれば、「美しい」作品ができるのだとばかり思っていました。
今年もすでに何回か行われたワークショップで、お花のいけ方や光の見極め方などアドバイスいただいたことで、花と向き合う時間を大切にしたり、自分が何を伝えたいのか、何を表現したいのか、そういったことをていねいに考える時間の大切さが分かるようになってきました。

あの小川さんがどんな花の写真を撮るんだろう。
実は、10年くらい前に花の写真を撮ろうと、カメラ・写真にのめり込んだ時期がありました。良いカメラやレンズを使ったら良い写真が撮れると思ってカメラを買い、写真教室へ通いました。だって知り合いのカメラマンはみんな良いカメラを使ってるから……。案の定、それだけではゴールには辿り着けませんでした。
しばらく花の写真から遠ざかっていた時に、自動車写真家の小川義文さんが花の写真集を出したというのを聞きつけました。小川さんはどんな花の写真を撮るんだろうと、俄然興味が湧き始め、花の写真への思いが再び目覚めました。小川さんのことは私が自動車雑誌社にいた頃から知っていて、「NAVI」に掲載されている艶ややかで空気感のある写真が大好きでした。
たまたま出版記念パーティにお邪魔できたのですが、その時の参加メンバーの顔ぶれを見て、正直おじけづいてしまい、1回目のグループ写真展には参加しませんでした。小川さんの写真集に収められているような花の写真は、自分に撮れないと分かっていたからです。しかし、その夏に開催された第1回目の写真展を観に行って、そういうことではないということが分かりました。プロやアマチュアの方が垣根を超えて、みなさん、花の写真を自由に楽しんでらっしゃる姿がとても新鮮に感じました。

自分が何を表現したいのか、その答えは代官山で。
写真展に向けてのワークショップでは、小川さんが身近で教えてくださいます。その教えの根源にあるのが「光と影」です。そして、「花と向き合う」ことの大切さもようやく分かってきたように思います。あとは、自分が何を表現したいのか、その答えが明確にできたら、きっと納得のいく写真が撮れると信じています。しかし何よりも、楽しんで撮ることが一番大事なんだと実感しています。
6月の代官山で、ぜひご覧ください。(2017年6月談)

第3回目となるグループ展に出展した2点の作品。日常生活のワンシーンを感じさせる、洋と和の組み合わせ。