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散歩の途中で。
永嶋さんと小川さん
人生が旅であるように、出会いもまた旅のようなものであり、人生にとってとても大雪なエッセンスだ。私が長年親しくお付き合いさせていただいている二人の写真家が、実はまだお互いに旧知の仲ではないことが分かり、小川さんとともに、西麻布で個展を開催中の永嶋さんを訪ねた。

永嶋さんは長年モノクロームでヨーロッパの街を撮影して歩き「散歩の途中で」という個展を毎年開催しいている。もちろん自らプリントをする写真作家だが、近年のデジタル化の流れの中で、デジタル写真と銀塩印画紙プリントの融合に挑戦し続け、おそらく世界で最初で唯一、その技術を確立した方。簡単に言うと、デジタルカメラで撮影した写真からネガフィルムを作成し、従来通りの焼き込みで印画紙プリントを行うという手法。デジタルデータからネガフィルムを作る工程のプログラムを開発し、「デジタル・ゼラチン・シルバーモノクロームプリント」DGSM Prntとしてワークショップを開催したり、フリーウェアを配布している。

モノクローム写真はオリジナルプリントで残せば、100年以上経っても残ることは歴史が実証している。デジタルデータはいつ消えてしまうかまだ分からない。そんな危機感からこの手法を開発している。いつも個展を開催するギャラリーが西麻布の交差点の上にあり、六本木通りに出れば富士フィルムの本社(今はミッドタウンに移転)があり、ネガフィルムの製造もやめてしまうかもしれない大手メーカーの足元でこのような活動を地道に継続している。

この日、小川さんと一緒に個展を開催中の永嶋さんをギャラリーに訪れた。実はお二人は長年写真の世界で活躍してきて、お互いの存在は知っていたものの、まだ未知の中だったということだったが、さすがにこの世界のお二人。あっという間に写真論を延々と語り合っていた。

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2013年8月
Photo and text:Hideo Miyazaki